[雑記]困惑。

2006/10/31 火曜日

50音小話の「に」、タイトルは「人間の欠片」で一応もう出来上がってはいるのですが、微妙な長さにこれを「小話」と位置づけてよいものやら迷い中の御月ですこんばんは。現在清書中なんですけど、ちょっと長い感じがするんだよなー…。

うーん。どうなんだろう? 改めて別タイトルで何か書こうかな。やるとしたらなんだろう。に…に…錦? 錦鯉、二色刷り、人気投票…うーん。「ニライカナイ」というタイトルで書いてたやつは結局「道標」に変えてしまったしなー。
長さも問題なんだけど、「何の実にならないシリアス話」というのがまた拍車をかけて悩みの種でして。人生相談をレオにもちかけるクリス様の話ですが…もうちょっと軽めの小話がいいのかなぁ?
ちょっと自分の中でのもやっと感がケリつくまで、小話アップはできそうにありません。期待してくださってる方には申し訳ないです。

[雑記]極小。

2006/10/24 火曜日

最近万年筆で小話を書いて、パソコンで清書という形を取っている御月ですこんばんは。
弘法筆を選ばず、とはよく言うことわざですけども、やっぱり道具は選んでしまうような気がします。道具の値段じゃなくて、感性というか…フィーリングというか。もちろん、お値段高めのほうが「物」としては上質なんですけど、それだけじゃなくって相性みたいなものがあるんですよね。半分、自己暗示かもしれませんけど。
物が壊れたら買いなおす、というのもひとつの手でしょうけれど、どうにもならなくなるまで修理して使い続ける、というのもいいと思います。今使ってる万年筆と一番気に入ってるボールペンと、財布と手帳と腕時計は多分、手の施しようがなくなるまで使い倒すんだろうなぁ…。

ちなみにタイトル極小。気づいた人は少ないと思いますが、実は雑記帳の見かけに若干の手を加えました。小話と雑記の区別をつけにくかったので、タイトル前にカテゴリを表示するようにしたのがひとつ。これは分かりやすいと思いますが(というか、わかりにくかったら改造の意味がないんで)、もうひとつは…日付の下に入っていた灰色のラインを、タイトルの上に引くようにしました。違いなんてないだろ、と思われそうですけど、これで1日のうちに複数記事がある場合、記事と記事の区切りがつけやすくなったはずです。多分。
…まぁ、1日に何回か書くことなんてほとんど無いでしょうから、意味があるかないかというと、やっぱり無い様な気もします…。

[小話]泣いてもいい場所

2006/10/23 月曜日

 思えば昔から、リムスレーアは泣かない少女だった。生来の気位の高さもあるだろうが、次期女王としての重圧もあったのだろう。辛いときも淋しいときも、いつだって唇をぎゅっとかみ締めて、顔を上げて前を向く……そんな少女だった。家族の中で一番甘えられているティエンですら、リムスレーアの涙は一度しか見ていない。きっと、ミアキスでさえも見たことがないはずだ。
 だから。

(あ)

 兄上、と唇だけで囁き、真っ青な顔でふらりと一歩踏み出したリムスレーアの瞳が潤んでいることに、ティエンは内心ひどく狼狽した。仕方の無いことだと今更ながらに気づく自分の愚かさに、ぽかりと頭に一発くれてやりたいほどだ。
 妹はとても優しく、人を傷つけることをひどく嫌う。婿を決めるための闘神祭が開かれたときも、顔を青ざめさせて、気分が悪いのだと呟いた。
 その、リムスレーアの前で、ギゼルを殺した。両親の仇とも呼べる男だとか、多くの命を奪ったこの内乱を引き起こした張本人だとか、そんなことは関係なく、ひとつのいのちが喪われるその瞬間を目の当たりにして、リムスレーアは傷ついたに違いない。返り血を浴び、死の匂いを纏わせて立つティエンの姿に、女王として人の上に立つ者としては優しすぎる妹が、怯えるのも当然だった。
 ちくり、と心が痛む。

(僕は、馬鹿だ)

 泣かせたかったわけじゃない。怖がらせたかったわけでもない。ただ、リムスレーアを取り戻して、自分の手で妹を守っていきたかっただけだ。ただそれだけだった。愛する妹の表情が嫌悪のそれに変わる様を見たくなくて、ティエンが視線をそらせようとした、そのとき。
「……ご」
「兄上は、悪くないのじゃ……」
 ごめんね、と続くはずだった言葉は、リムスレーアの小さな囁きと淡い微笑みによって途切れた。雪解けのような儚い笑みに、ふと胸を突かれる。
「リム……?」
 とす、と小さな衝撃とともに胸元に飛び込んできた細い身体を見下ろして、ティエンは大きく目を見開いた。最後に並んだときより高いところにリムスレーアの頭はあるが、その下に見え隠れする体つきは予想以上に華奢で、どれほど憔悴していたのかをティエンに思い知らせる。戦を止められない無力さを悔やみ、ひとりで苦しんできたリムスレーアが、どれほどの想いでもって自分を赦す言葉を紡いだのか。
 そして。
「会いたかったのじゃ……!」
 鮮血が染み付いたティエンの服に、小さな手でしがみつき、堰を切ったように泣き出すリムスレーアに、ティエンは呆然と見惚れた。
 誇り高く、いつも昂然と前を見据えていた顔をゆがめ、琥珀の瞳から大粒の涙をぽろぽろ溢すその姿は、ようやく彼女が『女王』でも『王族』でもなく、『11歳の、ただの妹』へと戻れたかのようだった。嬉しさも切なさも淋しさも憎しみも、押し込め堪えていた全ての感情をそのまま解き放ち、ただただ素直に泣き続けるリムスレーアは、幼子に似てあどけなく……ひどく、いとおしい。

(かえって、きたんだ)

 強張っていた口許に、ゆるゆると笑みが浮かんできた。緊張に冷えて固くなっていた両手を、こわごわリムスレーアの背中に回し、静かに双眸を伏せる。感情の発露としてどこまでも純粋に迸るリムスレーアの泣き声と涙は、傷つくことさえ忘れていたティエンの心を洗い流し癒していく、赦しの力に満ちているように思えた。
 取り戻す――そのために多くの命を奪った。敵も味方も、守るべき多くの民の屍の上に自分は立っている。その罪は決して赦されないし、忘れることもできない。
 ……それでも、救いは確かに与えられた。残された、ただひとつの『泣いてもいい場所』。
「ただいま、リム」
 亜麻色の艶やかな髪に顔を埋め、そっと囁く。

 零れ落ちた涙は緩やかに混じり、溶けていった。

[小話]通り雨が過ぎるまで。

2006/10/22 日曜日

 あ、と思ったときには、既に遅かった。薄く引き延ばされた灰色の雲から、細い雨が疎らに降ってくる。
「クリスさん、こっち!」
「え?」
 降ってきたなぁ、なんて空を見上げて暢気に呟くクリスの手を取り、ヒューゴは勢い良く駆け出した。とりあえず適当な店の軒先に入り、ふっと小さく溜息をつく。
 せっかくの、初めてのデートだというのに、ついていない。
 恋人同士になったというのにお互い忙しく、デートさえまだ一度もしていない状態だったのだ。一応毎日、ビュッデヒュッケ城のレストランで一緒にお茶を飲む時間は作っているが、それは『デート』とは呼べないだろう。そんな現状を打破すべく、かなり無理をして時間をつくってもらった上に、パーシヴァルやナッシュに助言を仰ぎ、完璧なデートプランを立てたというのに、この有様である。雲の様子を見ている限りでは、そう降り続く感じではないが、さすがに今すぐ降り止むこともないだろう。
(ちぇっ……)
 雨が降るとは予想外だったから、傘などの嵩張る雨具は持ってきていない。当初の予定では、若い女性に人気の雑貨屋でクリスへのプレゼントを買った後、やはり若い女性たちの間で評判の喫茶店で香り高いお茶とケーキを楽しむつもりだったのだが……あいにくと、どちらの店もここから少しばかり距離がある。自分ひとりならば多少の雨は気にせず走っていくのだが、さすがにクリスを雨に濡らすわけにはいかない。暫くここで雨宿りするほかはないだろう。
(……せっかくの、初めて、だったのになー……)
 どうせだから、あとあとまで思い出せるような、そんな楽しい想い出にしたかったのだが……予想外のアクシデントで、落胆させてしまったかもしれない。それとも呆れてしまってやいないだろうか。
 嫌な予想がぐるぐる回り、そろりと隣を見上げる。そこには、なぜかそわそわと視線を彷徨わせているクリスの姿があった。
「……クリスさん?」
 そっと呼びかけた途端、クリスがびくりと肩を震わせた。ヒューゴに対してがっかりした、という感じではないが、どことなく挙動不審である。
「あ、あの、ヒューゴ……」
 地面に視線を落とし、クリスがぼそぼそと呟く。普段ははきはきとしゃべるクリスの珍しい姿に、内心首をかしげながら先を促すと、クリスの頬がうっすらと桜色に染まった。
「その……手、……手を……」
「『手』?」
 言葉に誘われるようにして、自分の手に視線を落とす。迂闊極まりないことだが、自分の手はクリスの手をしっかり握り締めたままだった。駆け出したときに手を取って、そのまま離すのを忘れていたのだ。
「ごめっ、……俺……ッ」
「いや」
 慌てて手を離そうとするヒューゴに短く頭を振って、クリスはふわりと微笑んだ。きゅ、とヒューゴの手がしっかり握り返される。
「このまま、雨が上がるまで手を繋いでいてもいいだろうか?」
「もちろん!」
 咳き込むように応えたヒューゴにもう一度はにかむように微笑んで、クリスはすいと遠く空を見やる。その横顔に口許を緩ませたヒューゴは、指先に少しだけ力を込めた。こちらを向いてくれていなくても、温もりを通して正直な気持ちが伝わってくるような、そんな気がする。クリスの手は剣士らしく少しかたいが、それでも女性らしくやわらかくあたたかく、何よりも優しい。
(もうちょっとだけ)
 現金この上ないが、雨があまりすぐに上がらなければいい、とこっそり願った。

[雑記]参加。

確たる意思があったわけではなく、本当に「なんとなく」SNSに参加してみた御月ですこんばんは。とはいえ、いつまで気合が続くかはわかりませんが。
基本的に長続きしたものが数えるほどしかない(要するに飽きやすい)人間なので、あんまり自分自身に期待しないでだらっとやっていけたら、と思ってます。

正直なところ、SNSに参加するよりも、SNSを構築するほうが興味があるんですけどね。つか、そのうち社命で研究せんならんかもしれませんが。「そのうちやらなあかんこと」が多すぎて、自分でもよく把握できていないあたり、相当ダメっぽい。
SNSでの繋がりなんて、ぶっちゃけちょっと前のケータイメル友100人なんてのとあんまり変わらんのじゃないか、と疑ってしまう御月は、根本的に古いんでしょうねぇ…。一応、ミクシィなんかは紹介がないと入れない=現実に何かしら繋がりがないと入れない、という建前がありますが、掲示板?日記コメント?でのトラブルを聞くと、実際に知り合いばかりとも限らないんじゃないか、とも思いますし。

まぁ、友達の友達あたりならまだしも、友達の友達の友達なんて完璧赤の他人ですからねぇ…。

[雑記]時差。

2006/10/19 木曜日

このところどうも時差が発生して申し訳ないと反省仕切りの御月ですこんにちは。
実際にページを作成してからアップするまで、んでもってアップしてからこの雑記帳でもエントリにのせるまで、随分と時差が発生してしまっていて、知っている人と気づかなかった人とがいるかもしれませんが……あらためて。
えぇと、一応やっぱりいるかな、ということで、サイト説明のページと、あとついでにいわゆる「裏」を作成・アップしました。リンク切っていた「彼と彼女の日常」もそちらに移したので、直にとんだ人は404となってしまうのでご注意を。裏には現在ヒューゴ×クリスの「彼と彼女の日常」と、王子→リムの「畜生の恋」の2点しか置いてませんが、まぁ……そのうち増える、のかな?
分かりやすいところにリンク張ってるんで、ヒントなどは必要ないかと思い載せていませんし、お答えすることも無いと思います。

これから一月ほど、ちょっと私生活のほうで慌しくなるので、更新頻度がまたもや落ちるかもしれませんが、隙を見計らってちまちまやっていきたいと思ってます。
つか、新しい万年筆を手に入れたのですが、これがまた使いやすいのですよ……。清書の手間は増えるけど、少しずつ帳面に書く楽しみがあるので、意外と増える可能性もありますが。

[小話]天然反抗期。

2006/10/16 月曜日

 なんでこんなことになったんだ、と声もなく呟いて、クリスは目の前のテーブルを見やった。
 それほど大きくないテーブルの上には、空になったグラスが所狭しと並べられている。それほど大きくはなく、手の中にすっぽりと納まる程度の大きさだが、その中には相当に強い酒が入っていた。仄かに金木犀の香りがする、その黄金色の酒は、基本的に水や果実で割って飲むものであり、そのままで飲まれることはあまり無い。クリスは原酒のとろりとした口当たりと濃い甘さが好きで、果実などで薄めずそのまま飲むことが多かったが、それにしてもこれほどの量を飲んだことは無かった。
 なんでこんなことになったんだ、ともう一度ぼんやり思う。
 最初は、いつものように酒場でヒューゴと酒を飲んでいたはずだ。
 このところ、加速度的に忙しさは増していき、食事の時間も休憩の時間ですらも、どうしてもすれ違ってしまう。だが、夜更けならばまだ時間を調整しやすい……そんなわけで、最近は仕事を終えてから深夜、ビュッデヒュッケ城の酒場の片隅でふたり、酒を酌み交わすようになっていた。ほんの1、2杯飲むだけだから、時間にしてはそんなに無いけれども、今日の出来事や愚痴などを語り合う時間は、クリスにとって「一日仕事を終えたご褒美」のようで、楽しかった。
 それは、今日も同じことで。
(どこで……こんな風に……?)
 ややもすると睡魔に溶けていきそうな思考が、ぼんやりと脳内を巡る。原因というよりは元凶と呼べる目の前の男を力なく睨みつけ、クリスは小さく溜息をついた。視界の端で、ヒューゴが心配そうにこちらを見ている姿が映る。できることならとめたいだろうに、それをしないのは自分の意地っ張りで負けず嫌いな性格を知っているからだろう。それに甘えて、心配かけて我侭に振舞っている自覚はあるが、今更退くことなどできない。
(それもこれも、こいつのせいで……)
 そう、クリスにとって天敵とまで言えるこの男が声をかけてきたせいで、全てが変わってしまった。売り言葉に買い言葉、自分だって短慮だった部分はあるけれども全面的にこいつが悪い、と思う。父の友人ということを思わせぶりに匂わし、近づくでも遠ざかるでもない距離を保つ彼は、非常に……なんというか、癇に障るのだ。
 嫌い、ではない。もちろん好きではないけれども、嫌悪とか憎悪とかいった感情は無い。ただ、肝心なところはいつもはぐらかし、いつもいつも大人の余裕を見せ付けるような態度は、敵わないような、悔しいような……そんな気分になる。挑発に乗り、飲み比べなんてことになってしまったのも、それが遠因としてあるに違いない。
「ん? どうしたお嬢さん、もう降参か?」
「……いや……」
 飄々とからかうような声音にゆっくりと応えて、クリスは手を伸ばした。夢の中の出来事のような緩慢さでグラスを取り、口をつける。相当に感覚が鈍っているのか、酒精はまったく感じず、ただただ甘みだけが口の中に残る。飲み干したグラスをテーブルに戻そうとするが、距離感がつかめない上に手が震える。グラスを取り落としかけた刹那、すかさずヒューゴがグラスを取り上げてくれた。
「大丈夫? 気分悪くない?」
「……ん……」
 耳元で囁かれた言葉でさえも、どこか薄い紗を通したかのようにぼんやり滲む。大丈夫だ、心配するな、もっと多くの言葉を費やして安心させたいのに、うまく言葉が出てこない。酒豪だったという父譲りだろう、気分の悪さや頭痛などといったものは経験したことがないし、今も大丈夫だ。ただ、体内に溜め込んだ酒精がそのまま睡魔に変身したかのように、ひたすらに眠い。
「ちょっとジンバ! あんまりクリスさんに無理させないでよ!」
「すまんすまん……って俺が悪いのか?」
「だって、ジンバのせいでしょ」
「あー……まぁ、そうかな。じゃあ、お詫びに俺が部屋まで送ってやるから」
「……俺もついてく」
「そんな顔でにらむなよ、別に変なことはしないぞ?」
 ぽんぽんとリズム良く交わされる会話が耳に入るが、その意味を掴むまでに次々に会話が流れていき、抗議の声を上げる間もない。さらさらと砂が波に浚われ、溶けていくように、ふたりの言葉が発する傍から意識の底へ消えていく。
 眠い。とにかく、ひたすら、眠い。
「よいしょっと」
「変なとこ触ったら俺が怒るからね!?」
「あーはいはい」
 ふつりと落ちる意識の端で、クリスは自分を掬い上げる大きな手に、触れたような気がした。

 

 ゆうらり。ゆらり。
 大きな歩幅でゆっくり歩くその振動は、どこか静かな湖に浮かべた小船のようだと思った。穏やかで、温かくて、静かで……そのまま水に溶けていってしまいたいような、そんな気分になる。
 だとすると、ヒューゴとジンバの声は、遠から渡る風の声か、船べりに当たる漣か。さあさあと柔らかい雨だれのように、静かに染み入ってくる。

「……なんで俺が言わなくても、曲がるところ知ってんの?」
「そりゃ、お嬢さんは有名人だからなあ」
「もしかしてジンバ……」
「違うッ、断じてお前が思ってるようなことはないぞ」
「じゃあなんで?」
「……ま、いろいろあってな」
「ふうん……」

 広く大きな背中に、すり、と頬を摺り寄せる。衣服越しに伝わってくるぬくもりは、子供のころとまったく同じものだ。違う人なのに、どうしてこうも懐かしいと感じるのだろう。そして、どうして自分は懐かしくて懐かしくて……泣きたくなって、しまうのだろう。
 もう父の面影など記憶から随分と薄れ、ただぼんやりとした影しか残されていない。それは仕方のないことだと諦めていたはずなのに、ふとした拍子に理性の箍が外れてしまうと、届かない思い出を懸命に引き戻そうとする自分が現れる。
 今はもう居ない人。突然喪われてしまった人。大好きで、憧れて、いつかその父を越える騎士になりたいと、想っていた。
(……ああ、そうか……)
 ふと閃いた答えに、クリスは声もなく呟いた。
(だから、か……)
 きっと自分は、どうしても敵わないこの男に、父の姿を無意識のうちに重ねていたのだ。だから、敵わないことが悔しくて、けれど乗り越えたくて、嫌いになれなくて……反発してしまっていたのだろう。まるで反抗期の娘のように。

「……なぁ、ヒューゴ。俺が言う筋じゃないが……大事にしてやれよ」
「ジンバ……?」
「本当はもっと大事に愛されて、幸せになるはずだったんだ。だからヒューゴ、お前がこれからは護ってやれよ」
「……なんか、全然話がわかんないんだけど。けど、言われなくたってそうするよ。決まってるでしょ」

 とうさま、と小さく呟く。こみ上げる涙が頬を伝わりおち、ジンバのシャツの背中にしみを作る。
 偽者でもいい。酒の酩酊がもたらした、ひと時の夢でもいい。それでもいいから、今だけはただこの温もりに縋りついていたかった。
(とうさま、大好き……)
 うつらうつらと揺れる夢の中で、どうしてももう一度伝えたかった言葉を呟いて、クリスは静かに目を閉じる。
 明日になればきっと忘れてしまって、また今までと同じように反発してしまうだろうけれど。

 せめて、今このときだけは。

[雑記]浪費。

基本的に財布の中にあまり大金を入れておかないのですが、たまに入れておくとものの見事に浪費してしまう御月ですこんばんは。
金が無かったら諦めるのに、なまじあると使っちゃうんですよねー…。こないだ深夜に「パンプキン・シザーズ」のアニメを途中まで見て(途中で睡魔に負けてしまったのです)、今月の月マガ見て、今日早速既刊の5巻まで買っちゃったんですよ。ちょっと大きいサイズだから、5冊で2700円ちょっと。…月の小遣い5000円なのにー。
あんまり中身見ないで直感で買い揃えたわけですから、傍目には浪費なんですけど、中身はかなりの燃え展開で面白かったです。いやー、適当にえいやっと引いたくじが大当たりだった気分。
早く続き出ないかなぁ……。

 

拍手お返事。
12日23時:感想ありがとうございます~! クリス様の「恋愛音痴」っぽいイメージは、生真面目な性格もあるでしょうけれど(お付き合いというものは全て結婚が前提だと当然のように思ってそうですし)、社会のルールをすんげぇ四角四面・律儀に守ってるっぽいところもあるんじゃないかな、と勝手に思ってます。毎週教会にきちんと通うような感じですかね(笑)。勝手なイメージを膨らませて書いたものですが、ちょこっと賛同いただけたようで嬉しいです♪
あと、無理やりものは御月も苦手なのでご安心ください(笑)

[雑記]逆転。

2006/10/6 金曜日

このところ昼夜逆転生活を送っている御月ですこんばんは。下請けは辛い…。
どうしても、昼間・元請けがクライアントに提出&直し→夜中に元請けからうちに直しが来る→朝に提出→昼間・元請けが……というサイクルになっておりまして。こちらの生活を考えるとあんまりやりたくはないのですが、何せ……ぶっちゃけ、お金がイイ! 下手にコチラから提示するよりもイイ値段を向こうから出してくれることもあるし、支払いが遅れることも無いし、なかなかこちらからは断りきれないのです。
でもやっぱりしんどいんだよなぁ……はふぅ。

ところで。
どうでもいい話ですが、このサイトを見てくださっている方にとって、「王子×リム」ってのはアリなんでしょうかねぇ? 兄妹じゃなくって、兄妹だけど恋愛話。
実は50音小話、「力づくのKISS」よりも「畜生の恋」というタイトルのものが先に仕上がったんですよね。しかし、さすがにブログで小話で出すのはまずかろう、ということで、「力づく~」を書いてアップしたのです。
御月としては、兄妹ってのはもう本当に大好きなカテゴリではありますが、カップリングとしても成立するよなぁとも思うので、アリっちゃアリなんですけどねー。
……もうちょっと数がたまったら、整理して出せたらいいなぁ…。

[小話]力づくのKISS

2006/10/5 木曜日

「ねークリスさん」
「なんだ?」
 穏やかな昼下がり。温かい日差し。湖畔を吹き抜ける爽やかな風。忙しい合間を縫って、湖を一望できるレストランテラス席で一緒にお茶をするには、絶好の天気である。そのせいか、ゆっくりと真正面から見つめるクリスの穏やかな表情は、いつもにもまして輝いているように、ヒューゴには見えた。つい先日、ようやく想いを口にし、晴れて『恋人』になってから初めてのデートなので、尚更かもしれない。
 そんなわけで。
 正直に。率直に。ヒューゴの脳内辞書に「迂遠」「遠回り」「婉曲」の類は記録されていないから、ごくごく当たり前に、思ったところを告げる。
「キスしたいな」
「……なッ……!?」
 動揺のあまり二の句が告げないで居るのだろう、茹蛸も驚くほどの速さで顔を真っ赤にしたクリスに、ヒューゴは小さく首をかしげた。
 そんなにおかしいことを言ったつもりはないけれど、もしかしたら誤解したのかもしれない。クリスが恥ずかしがり屋なのは知っているから(何しろ『好きだ』の一言を口にするのでさえも、羞恥のためか顔を耳の先まで赤くし、目を潤ませながらだったのだ)、一応軽くフォローの言葉を添える。
「えっと、今ここでキスしたいって言ったわけじゃないよ?」
「当たり前だッ!」
 即座に返ってきた、噛み付くような口調の応えに、ヒューゴはますます首をひねった。てっきり衆人環視の中でのキスが恥ずかしいのかと思っていたのだが、違うとなると理由が分からない。
(……もしかして……)
 天啓のように閃いた考えに、ヒューゴははっと表情をこわばらせた。
「もしかして、俺とキスするのが嫌とか!?」
「嫌いとか嫌いじゃないとか、そういう問題じゃないだろう!」
 他人に聞かれないよう、声量は控えめながらもきっぱりと返された言葉に、ヒューゴは内心安堵した。
 「花より団子」「色気より食い気」と揶揄されることも多いヒューゴだが、それでもお年頃の少年らしくいろいろと……気にはなっているのだ。好きな人に好きだと伝えたいし、好きだと言われたいし、手も握りたいしキスもしたい、あんなことやそんなこともしたい。そんなことをおおっぴらに言うと下心だけだと受け止められかねないし、下心がまったくないわけでもないけれども、その根底にあるのは間違いなく『好き』という気持ちだ。それだけは、自信を持って断言できる。
「じゃあ、なに?」
「だって……」
 どうやら、目線を合わせることすら恥ずかしい話題らしい。視線を床に落とし、口ごもる様子は、自分より年上とは到底思えない初々しさに満ちている。ヒューゴとて他人をどうこう言えるほど経験があるわけではないが、クリスのいかにも恋愛慣れしていない仕草はなんともかわいらしくて、自然と表情が緩む。けれど、躊躇い、はにかみながら零された言葉は、ヒューゴを「青い春」と書いて青春と読む、そんな幸せ気分から、永久凍土へと突き落として余りある破壊力があった。
「……だって、私たちはまだ結婚していないんだぞ? く、口付けなんてそんな……」
「……………………はい?」
(けっこん。血痕。………『結婚』!?)
 予想外にもほどがある言葉に、ヒューゴは呆然とするが、クリスにとっては当然の発言のようだった。変わらない笑顔のまま、遠くからやってくる人影を見つけて静かに立ち上がる。
「ごめんヒューゴ、サロメと打ち合わせがあるからちょっと行ってくる。すぐに戻るから、少し待っててくれないか?」
「……あ……、うん……」
 糸の切れた人形のように、ヒューゴは無機質にこっくりと頷いた。もはや思考する気力すらない。名残惜しそうに何度も小さく振り返りながら立ち去るクリスの後姿が、完全に見えなくなった頃、ようやくヒューゴは大きな溜息をついた。力尽きたように、がくりとテーブルに突っ伏す。
「前途多難だなー……」
 ゼクセンとカラヤでは、文化が違う、それは重々承知していた。それこそ食文化から始まって、当たり前のように思っている小さな物事にさえ、よくよく見れば些細な違いはある。
 だから、割合オープンなカラヤに比べ、ゼクセンでは貞操観念が強いということも知っている。女神信仰のせいか、結婚するまでは身を清らかに保つのをよしとする風潮はあるとも聞いている。もっとも、教えてくれたのはパーシヴァルで、肝心の彼自身は女性との噂が絶えたことがなく、特殊すぎてクリスももはや黙認しているらしい。そのため、あんまり信用できる話とも思えず、話半分で聞いていたのだが、どうやらパーシヴァルの話はかなりの部分真実だったらしい。
 ……に、しても。まさかキスさえも結婚までお預けとは、思いも寄らなかった。
「見てろよ……」
 こちらの気も知らないで、綺麗で無垢なクリスの笑顔を脳裏に描いて、小さく呟く。クリスの価値観は確かに大事にしてあげたいとも思うけれども、さすがにこれは譲りすぎだ。しかも、クリスに現実を知ってもらわなければ、結婚後も「早くコウノトリが来ないかなぁ」なんて暢気に言い出しかねない。いや、絶対言うに決まっている。
 どうやってクリスを攻略するべきか、幾つもの計画が浮かんでは消え、綿密に練られていく。
 初心で、純真で、無垢なクリス。そのクリスの幻想を壊すのもかわいそうだが、男は皆ケダモノなのだと知ってもらわなければ困る。何よりもヒューゴ自身、待ちきれそうに無かった。
 かくなるうえは、実力行使あるのみ。
(待ってろよ……!)

 

 その数日後、不意をついてキスしたものの張り倒され、頬に真っ赤な手形をつけたまま気絶しているヒューゴの姿が目撃されたのだが、それはまた別の話。