[雑記]感想。

2006/8/28 月曜日

夏休みとその後の風邪でのんびりまったり過ごしたツケが回ってきて、月が変わるまで少し余裕がない御月ですこんばんは。まるで夏休みの最後に宿題に追われる小学生のようです。……そう考えると、あまりの成長の無さにちょっと眩暈が………。

で、感想。

「げんしけん」8巻買いました。…荻上さんがかわいいんですけど! めっちゃ! なんかもー「青春」って感じでウハウハ笑いながら読みました。身に覚えがあるようなないような感じで、なんだか凄く懐かしかったです。
それにしても……荻上さんホントにかわいいな。なんだかもう、後輩に居たら大野さんの立場になって、かいぐりかいぐりかわいがりたいぐらいにかわいい。多分、咲さんも大野さんも、ある程度「完成」されてるというか、まとまりがあるのに対して、荻上さんはアンバランスなところが萌えるのかもしんない。たとえて言うなら生卵ですかね。殻は固いけど、中はもろくて、意外と壊れやすい感じが。あと、普通の人っぽい笹やんのがんばり具合がまた。
どうでもいいけど、8巻てかなり大幅増量なんですよね。…9巻は大丈夫なんですかね、ちゃんと単行本になるだけの容量にするには、やっぱり大幅書き下ろしがあるのかな。雑誌掲載であと残ってるのって最終話だけだと思うんだけど……ま、余計な心配でしょうけど、気になります。

[雑記]徹夜。

2006/8/24 木曜日

案の定といえば案の定、予定調和といえば予定調和なんですが、つい先日拍手の返事で「用心深く」なんていった傍から一昨日に徹夜して、案の定微妙に風邪をぶり返させた御月ですこんにちは。
原因は仕事ではあるんですが、仕事がなぜ徹夜になったかというと自分のスケジュール管理のへたくそさがあるわけでして……えぇ、どうやっても自業自得でしかありえません。おかげで相方からさんざんに白い目で見られました。同情の余地はないとずっぱり。
ぶり返したといっても、熱はまったく出ず、単純に咳が出るだけではあるんですが…くしゃみもそうですけど、咳も意外に体力を消費するというか。昨日は12時ぐらいに力尽きるよーに寝てしまいまして、今日も異様に寝てるんですが…まぁ、寝れば体力回復しそうな気もしますし。今日も早寝早起きしたらさっくり治っちゃうんじゃないかな、と期待しています。
出石へ蕎麦を食いに行った両親が、蕎麦ではなく新鮮卵をお土産にくれたしね。それにしても、卵かけご飯専用のしょうゆってなんであんなに美味いんだろう…。おかげで昨日の昼と今日の朝・昼ごはんはたまごかけご飯でした。さすがに今晩はもうちょっとマトモに料理しようとは思ってますが…。

 

工事現場の猫さん。8月はじめのほうに会った猫さん。日曜日だったため、人の居ない工事現場でのんびりしていました。フェンスの近くに居たため、フェンスのオレンジに溶け込んで最初は気づきませんでしたが。
それにしても、都会の猫ってのは人馴れしてますねー。フェンスの隙間からカメラをねじ込んで、上からぱしゃぱしゃしても、気づいているはずなのに逃げ出すわけでもなく、気にするそぶりをまったく見せませんでした。

[雑記]食事。

2006/8/22 火曜日

昨日久々(本当に久々です)にご飯を作り、自分で作ったご飯を食べながら「あーやっぱり家庭はいいなぁ」と微妙にずれたことを思ってた御月ですこんにちは。外食ばかりといっても、コンビニとラーメン屋とめしやぐらいしか行ってませんが、それでもなんとなく。
相方の実家から大量の野菜が送られてきて、冷蔵庫に入りきらなかったピーマンとオクラとささみ(牛肉より安いので)を、チンジャオロースーの素が無かったからホイコーローの素をベースにオイスターソースと麺つゆで味付けして作った自称「チンジャオロースー」ですが。

家を出てしみじみ感じたことなんですが、料理ってのは案外難しく考えなくても気合でどうにかなるもんだな、と。適当でもいい、とでも言い換えられるでしょうけど。うっかりさんな相方のおかげで調味料の棚に開封済みの麺つゆ(1リットル)が2本も並んでるはめになり、現在だし醤油をすべて麺つゆに変えて料理してるんですが、そんなに違和感ないですしね。もちろん、分かる人にはわかるでしょうが、作って食べるのが自分で気にしてないのなら問題ない、ということで、せっせと麺つゆの消費に励んでいます。
……もうじき素麺の季節も終わっちゃうしねぇ…。

拍手お返事。
18日13時:ありがとうございます~。実際、熱自体は3日で引いたんですけど、それから日常生活に復帰できるまでちょっとかかりましたしねぇ…。調子に乗って無茶して、またもやぶり返しなんてことにならないよう、しばらく用心深くしていこうと思ってます。やっぱり体が資本・早寝早起きは大事ですよ!

[小話]世間知らずの姫君と1ポッチ分の未来。

2006/8/19 土曜日

「兄上、それは何なのじゃ?」
「え?」
 かわいい妹のシンプルな質問に、思わず僕が問い返してしまったのは、彼女のことをなおざりにしていたからではない。断じてそれは違うし、それだけはありえない。
 ものすごく単純に、質問の意味がわからなかっただけだ。リムと一緒に東の離宮及びルナスへ向かうために、とりあえずソルファレナで買い物をすることになって…で、僕は目当ての物を買って、物を受け取り、金を渡して釣りを受け取っただけだ。ごくごく普通の動作で、疑問がどこにかかっていたのかわからなかったのだ。
 カウンターの向こうの主人。受け取ったマント。カウンターの上。リムのきらきらした眼差しがどこにとどまっているのかぐるりと見回して、僕はああ、と小さく声を上げた。
「もしかして、これのことかい?」
「そうなのじゃ」
 こっくりと頷いたリムの小さなてのひらに、受け取った釣りのうちの一枚を乗せる。わぁ、と歓声をあげて、店内に差し込む光にかざしてみせるその様子は、珍しく年齢相応にかわいらしい。いや、何時だってリムはかわいらしいのだけれど。
「これはね、1ポッチ銅貨だよ」
「ほぅ、これが…」
「そっか、リムは実際に見るの初めてだったっけ」
「うむ。知識としては知っておったが…そうか、これが『お金』というものか…」
 素直に感嘆した口振りで、リムがためすがめす硬貨を眺める。それは宝物をもらった子供のようで……かわいいけれど、少し哀しいと思った。
 実際に硬貨を見ることがなかったのは、太陽宮から出なかったというのもあるし、出て買い物する必要がなかったというのもあるだろう。足りないものは誰かに言えば揃えてくれるから、自分でやる必要は無い。けれどそれ以上に、時間が無いというのが本当のところなんじゃないだろうかと僕は思ったのだ。
 リムは次期女王として厳しく育てられている。王族としての教養から人の上に立つものとしての心得、国家を運営するために必要な経済学に軍事関連。もちろん現実は知識だけでどうにかなるものでもないけれども、確かな知識に裏打ちされた自信がなければ、老獪な貴族を説得することもできないということなのだろう。小さな肩に多くの人々の未来を乗せているリムは、毎日毎日勉学に追われて、ほとんど太陽宮から出ることができないでいる。そして多分、これが自由に動ける、最後の時間になるのかもしれなかった。
 今でさえ太陽宮から出る間もなく、みっちり勉強漬けの毎日なのだ。大人になってもやっぱり、今まで以上に忙しくなるだけなんだろう。名ばかりの王子として、かなりの自由を認められている僕とは違って、リムは死ぬまで「女王」に縛り付けられる。
 それは、もう決まった未来で。
「…リム」
「なんじゃ、兄上?」
 リムがうっとりと銅貨を眺めている間に、こっそりとゲオルグが両替してくれたらしい。袖を引かれ、手のひらに落とされた硬貨の感触に内心感謝しながら、リムに小さく声をかける。
「他にもあるよ。5ポッチ銅貨、25ポッチ銅貨、100ポッチ銀貨、500ポッチ銀貨、それに2500ポッチ銀貨と……10000ポッチ金貨」
 リムの両手の上に、硬貨がひとつひとつ折り重なる。次々に現れた硬貨に、リムは琥珀の目をまんまるにした。
「ふわぁ、こんなに種類があるのか! 覚えるのが大変じゃのぅ…」
「色も形も違うから、見分けはつけやすいと思うよ。大丈夫、リムだったらすぐに覚えられるよ」
「そうかのう?」
「僕が保証するよ。じゃあ……はい」
 小首をかしげるリムの手の中から銀貨と金貨を抜き取って、かわりに25ポッチ銅貨を2枚乗せる。小さなてのひらの中でこすれあって、しゃらしゃらと綺麗な音がした。
「これが、リムのお小遣い。ためしに何か、小さなお菓子でも買ってみよう? 実際に使ってみたほうが、リムも覚えやすいだろう?」
「………わかったのじゃ!」
 にっこりと満面の笑みを浮かべ、手の中の硬貨をこぼさないようにしっかり握り締めて、リムはくるりと身を翻した。そう広くは無い店内を軽やかに走って、扉の前で振り向く。
「兄上、そうと決まれば早く行くのじゃ!」
「ちょっと待ってね」
 とりあえず買ったばかりの荷物を後ろに居たゲオルグに押し付けて、僕も足早にリムの元へ向かう。リオンを着せ替え人形にして遊んでいる叔母上とミアキスは僕たちの動きに気づいていないようで、ひとりリオンだけがあわてているけど……まぁ、そのうち追いつくだろうし。
「そういえば、カイルが教えてくれたんだけど、この近くに美味しいお菓子屋さんがあってね。小さい飴をたくさん売ってるんだって」
「行ってみたいのじゃ~!」
「僕も聞いただけで、行ったことは無いんだ。もし道に迷ったらごめんね?」
「兄上と一緒なら、わらわはちっとも構わぬぞ!」
 結局僕はまだ15歳で、何の力も持っていなくて、妹にしてあげられることなんてほとんどないけれど。
 それでも、せめてこの小銭分の自由ぐらいは、感じさせてあげたいと、思った。

[雑記]夏風邪。

2006/8/16 水曜日

夏休みで実家に帰ったせいで、どうも家族から夏風邪をうつされたっぽい御月ですこんにちは。とはいえ、微熱と喉と頭痛がだいぶ治まってはきてるんですけどね。昨日・今日と二日続けて死んだよーに寝てます。なんだか、生活の9割が睡眠で、合間合間に食事が入ってるような感じです。明日には元気になるといいなぁ。

…14日、親に連れられて六甲山歩いて、両足がえげつなく筋肉痛だからちょうどいいや。

[雑記]脳内再生。

2006/8/10 木曜日

久々に聴いた曲がえらくツボに入りなおしてしまい、延々と脳内再生している御月ですこんにちは。ブリーフ&トランクス聴くのごっつ久々なんですけどね。一時はまってただけに思い出しはまりとでも言いますか、ぐーるぐーる脳内再生してます。外に出るとき、自転車こぎながら気づけば鼻歌うたってたりとかね。
ちょっとタイトルは覚えてないんですが、定食屋とかダフ屋さんのとか。勢いあまって、iTuneのミュージックストアからアルバム買ってしまいました。石焼きイモとかひとりのうたとか。
……昔よく聞いてた曲ってのは、何かちょっとした誘引力でもあるんじゃないかなぁとしみじみ。

隠れ家。カメラのデータを整理してたら発見した画像。先月末ぐらいに、相方の実家へ行ったときにとったものです。ちょっとわかりにくいので解説すると…高速道路のSAって、駐車スペースからちょっと段差があることが多いと思うんですけど。その空洞になってる段差部分に子猫が居たんですよ。1匹だけじゃなくって複数匹。写真上部に映ってるのは、段差の奥にある自販機です。場所の説明わかってもらえるかなぁ…?
カメラを向けると親猫は別のところに行ってしまったのですが、多分この空洞部分が塒になってるんでしょうね。まぁ、普通の人はこの段差の奥なんてのぞかないでしょうし、雨風を防げる快適な巣なんだろうなぁ。
ちなみになぜ御月が知ったかというと、偶然子猫が穴から顔だけ出してたから。じゃなかったら気づかなかったよ絶対。

[小話]鈴の音を聞きながら。

2006/8/7 月曜日

 人がどれほど努力しようとも、どうにもならないもの、というのは確かにある。がんばったところで状況を多少和らげることぐらいしかできず、結局根本的には解決のしようがない問題は、世の中には多い。むしろ、自分の努力で何とかなってしまうことのほうが少ないとさえ言えるだろう。
 そんなわけで。
「うぅ……」
 どろりと濁った眼差しを天井に向けてクリスが小さく呻いた。ぐったりとソファに仰向けになっている姿は、よく言えば陸揚げされた人魚姫のようでもあり、悪く言えば……「ダメな大人の見本」だろうか。日ごろの凛とした姿勢とか威厳とか、そんなものは微塵も感じられない。クリスに憧れる聖ロア騎士団の面々が今の姿を見れば、さぞや失望するに違いない。
 とはいえ、クリスとてひとりの人間である以上、いくら自分を厳しく律するといっても限度があり、崇拝される偶像そのままで常に振舞うことはできない。寒さには震え暑さにはうんざりする、ごく普通の人間なのだ。
「…………」
 現実の不快な暑さを忘れようと、振り切るように目を閉じる。なんとか快適な夢の世界に逃げ込もうとするが、じっとりと額や背中に浮かぶ汗の不快さがそれを許さなかった。
 暑い。眠い。だるい。
 脳内がその3つの単語で埋め尽くされる。
「…………」
 体温を写しとったソファの微妙なぬくもりに耐え切れず、少しでも涼しくなろうと、クリスはわずかに体の向きを変えた。ひんやりとした感触もつかの間、すぐさまじわりと熱が伝わってくる。いっそのこと床に直接シーツを敷こうかとも思うが、さすがにそれは躊躇われた。もっとも、耐え切れなくなれば実行するかもしれないけれど。
「………………」
 騎士団の本拠でもあるブラス城と、ここビュッデヒュッケ城はそれなりに離れている。ほぼグラスランドに近い(実際、国境として機能している)ブラス城と、湖畔のビュッデヒュッケ城では、一口に夏といってもだいぶ感じ方が違っててもおかしくはない。からりとした気候のブラス城に比べ、ビュッデヒュッケの夏はもっと……湿気を多分に含んでいるものだった。
 湖から吹く湿り気を帯びた風は、常ならば涼しく感じられたに違いない。けれども、あいにくと今年の夏は、セシルいわく「今までで一番暑い夏ですねー」とのことだった。例年にない暑さのせいか、本来ならば体感温度を下げてくれるはずの風は、逆にべたべたと体にまとわりついて不快感を高めてくれている。夜になってもそれは変わらず、おかげでクリスはいささか睡眠不足気味だった。
 夜寝れない。体力が落ちる。昼間寝ようとしても、昼間はもっと暑い。疲れる。眠ろうと努力する余力さえ、ややもすれば失ってしまいそうになる。
「うううぅ……」
 不機嫌と評するにはいささか覇気に欠ける唸り声をあげ、クリスは荒んだ目つきで天井を睨みつけた。いっそのこと、本当にくたくたになるまで訓練すれば、力尽きて心地よく眠れるのかもしれない。勿論早朝の訓練は毎日欠かさずやっているが、このところの暑さにすっかりげんなりしてしまって、日中の行動は控えめにしていた。
 どうせなら今からするか、と体をのろのろ起こしたとき、タイミングよくドアがノックされた。同時に扉が開き、ひとりの少年が姿を現す。
「…なんか、元気なさそうだね」
「こうも暑くてはな……」
 開口一番の挨拶に、クリスは苦笑を浮かべて答えた。
 ビュッデヒュッケ城に住む大人たちが軒並みダウン気味なのに比べ、子供たちは暑さに比例して元気さを増しているようだった。それは、炎の英雄たるヒューゴとて例外ではない。クリス以上に慣れない気候を体験しているのに、けろりとした表情で毎日を過ごしている。
「で、どうしたんだ?」
「うん。クリスさんにいい物あげようと思って」
「『いい物』?」
 にこにこと笑みを浮かべながら、ヒューゴが後ろ手に隠し持っていた箱を差し出した。小首を傾げつつ受け取り、目線の高さまで持ち上げる。何か軽い、硬いものが入っている感触が、する。
「なんだ?」
「いいからいいから。あけてみて」
 促されるままに箱を開ける。そこには、硝子でできた、変わった形状の鈴が入っていた。取り出すと揺れ動いて、ちりりんと涼しげな音が鳴る。普通の鈴とはまた違った音色に、クリスは思わず目を細めた。
「『風鈴』って言うんだって。東のほうでね、夏に窓辺につるすんだって聞いた」
 冷たいものを食べる。水浴びをする。風を取り込む。どれだけ努力したって、直接的に暑さを乗り切るには限度というものがある。天候や気温は人間の努力でどうにかできるものではない。だからこそ、東方では、身の回りの小物に寒色系の彩色を施したり、風鈴を置いたり……視覚や聴覚で、「涼しい」気分だけでも取り込むのが主流なのだそうだ。
「へぇ……」
「これで、少しでも涼しくなれるといいね」
「そうだな」
 効果があるのかどうかは分からない。けれども、ヒューゴが気遣ってくれた、それだけでも、クリスにとってはありがたいし、夏を乗り切る気力の糧にもなる。日に日に疲れた表情を見せる自分を心配して、わざわざ何とか涼を取る方法を調べ、行動してくれたのだろう。それが、何よりも嬉しかった。

 きっと、今日はいい夢が見れるに違いない。

[小話]白い吐息を封じ込め。

2006/8/4 金曜日

 ずっと下に落としていた視線をゆるり巡らせ、クリスは天を仰いで小さく嘆息した。頭上に広がる空には、地形のせいか…あるいはこの場所ゆえの特殊性か、灰色の雲が紗のように薄くたゆたっている。太陽の姿も熱も、どことなくぼんやりとしたものになっているように見えた。
「…なにをやってるんだわたしは…」
 零れ落ちた呟きは、音になる前に白く凝って宙に解ける。真なる水の紋章が封じられていた名残だろう、夏だというのに何もせずじっと留まっていれば、風邪でも引きかねない寒さに満ちている。とはいえ、あと数年も経たないうちに遺跡に満ちた冷気は薄れ、ただの平凡な『枯れた遺跡』になるはずだった。真なる水の紋章は今はここになく、クリスの右手におさまっているからだ。
 何をやっているんだ、ともう一度呟いて、クリスはぐるりと辺りを見回した。
 視線を遮るように、乱雑に柱やら何やらが崩れ落ちている遺跡の中は、お世辞にも綺麗とはいいがたい状態だ。この中から何かを探そうとするのであれば、それなりの人手が必要になるだろう。にもかかわらず、クリスは単身、何の準備もせずに思いつくままこの遺跡を訪れた。きてしまった。
 そもそも、遠くゼクセンを離れ、このリザードクランの奥にある遺跡までやってくる時間など、本当はなかったはずだ。ヒューゴとふたりこの地を旅立つために、騎士団内部の世代交代などやるべきことは多く…その中でも最大の計略実行を10日後に控え、クリス自身含め周囲は加速度的に慌しさを増していた。
 だというのに、自分ときたらこんなところで、見つかるはずもないものをひとり探している。自分がもうひとり居たらこんなところにいる場合かと叱りつけただろうし、生涯の伴侶ともいえる少年はもっと強く自分を詰るに違いない。何しろ朝起きて、隣で寝ている彼を置き去りにして、書置きひとつ残さず何かに取り憑かれるようにきてしまったのだから、心配をかけている分、怒りもまたひときわ強いだろう。
 そこまで分かっているのに、どうしてもこの場を立ち去ることができない。何か小さな、かけらでもいい。何か残されてやしないかと探し、残っているはずがないと諦めて、それでも諦めきれずうろうろと探しはじめ……先ほどからその繰り返しだった。
 父は、自分の目の前で、命を落とし消えうせた。後には何も残らなかった。その前に届けられたペンタグラムと、右手に託された紋章以外、何も残してはくれなかった。取りすがって泣きつく遺体すら、砂のように崩れ落ち消えてしまった。
 託された紋章は、確かに形見のようなものだ。けれども、それ以外に何か、もっと普通の『父親』と自分を繋ぐ何かが欲しかった。それは、『ジンバ』ではなく『ワイアット』からの何か、ともいえるかもしれない。
 不意に。
「クリスさん」
 じゃり、と地を踏みしめる音と同時に呼びかけられ、クリスはゆるゆると振り返った。見なくても声で、気配で誰かは分かる。どうやって謝るべきか、視線をさまよわせて言葉を捜しているうちに、ふわりと手をとられる。
「クリスさん、帰ろう」
 ヒューゴの声は、クリスの予想を裏切ってひどく優しかった。触れたところから伝わるぬくもりに、途方にくれていた心が少しずつほぐれてゆく。どうやってここを知ったのか、なぜ怒らないのか、聞きたいことはあるけれど、声にはならず、クリスは幼子のようにただ小さく頷いた。
「その代わり、あとでまた来よう?」
「……うん」
「ちゃんと準備して。一緒に、ジンバの遺品を捜そう?」
「うん……」
 少年の温かい体をぎゅっと抱きしめる。自分でも理由の分からない涙が零れ落ち、クリスはそっと瞼を伏せた。

[小話]ささやかな祈り

2006/8/1 火曜日

 闇夜にぽかりと浮かぶ月は、冷たく…けれど優しい光を放っている。窓の向こう側にちょうど映る月影に、リムスレーアはわずかに目を細めた。
「あにうえ……」
 どこか兄に似た光を放つ月に、祈る。それはいつの間にか、リムスレーアの習慣となっていた。母と父はこの世を去り、兄は遠くこの地を離れている。残った女王騎士はミアキスを除きほとんどが態度を変え、太陽宮からもリムスレーアからも、かつての闊達さは嘘のように消え去っていた。兄王子やサイアリーズが居た頃を知っているものにとっては、今の太陽宮の静まり返った有様は、まるで別の場所だと思うに違いない。
『――――の要塞が――』
『ビーバーに――』
『――王子軍は――』
 時々伝え聞く戦況は、断片ではあるけれども微かに兄の消息を教えてくれる。それを聞くたびに、リムスレーアは嬉しいような……悲しいような気持ちに襲われた。
 情勢はゴドウィンにとっては良くないらしい。それはそのまま、兄とその仲間たちの活躍を表している。けれども、活躍の機会が多いということはすなわち、戦の多さと、兄が前面に立ち戦っていることをも示している。責任感の強い兄は、陣頭に立たず、ぬくぬくと後ろで守られる事を良しとするような人間ではない。そうした兄を誇りに思う反面、どうか、と祈らずには居られないのだ。
 もっと自分が大人であれば、良かった。ギゼルやマルスカールと対等に渡り合い、母のように女王騎士の忠誠を得られるような大人であれば、兄ひとり危険にさらすようなことにはなっていなかった。
 助けに来て欲しい。己の力不足が不甲斐ない。心細さと、悔しさと、わずかな恐怖と多大な憎悪と、沸き起こるものは多々あるけれど。
「兄上、どうかご無事でいて……」
 冴え冴えとした月に、リムスレーアはひとり頭を垂れる。ささやかな祈りが聞き届けられるかどうか、わからぬまま。