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	<title>天月公司　雑記帳</title>
	<link>http://www.clock-works.net/blog</link>
	<description></description>
	<lastBuildDate>Wed, 14 Apr 2010 02:19:49 +0000</lastBuildDate>
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	<item>
		<title>らぶ・あくしょん！</title>
		<description>　鏡の中にはひとり、見慣れない顔で見返す女がいた。長くまっすぐで癖の無い銀髪は今はおろされ、さらりと肩を流れ落ちる。うっすらと施した化粧は、すっきりとした目鼻立ちに仄かな色香を添えていた。我ながら悪くは無いと思う。
　思うのだが。
「……ううぅ」
　どうにもこうにも気恥ずかしくて、クリスは低く唸り声を上げた。鏡に映る自分の姿をこれ以上直視できず、すいと視線をはずす。
　今クリスが身に纏っているのは、常の銀の鎧でなければ橙の騎士衣でもない。もちろん若草色の旅装でもない。クリスを肢体を包んでいるのは、ゼクセンでこの夏流行した、ありふれた……それだけにこれまでクリスが着ることの無かった、ごく普通のワンピースだった。薄い蒼のワンピースに合わせて、肩にかけた淡い桜色のショールは文句なしにクリスの端正な容姿を引き立てているのだが、肝心のクリス自身はこうしたものを着慣れておらず、面映いような、むずがゆいような気持ちを抑えられないでいた。
　まるでいそいそと逢引に出かけるお嬢さんたちのようだ、と思って、クリスは深々とため息をついた。それはまさしく、今の自分のことではないか。
「早まっただろうか……」
　僅かに後悔を滲ませて、クリスはがっくりと項垂れた。パーシヴァルの冗談を真に受けてしまった己の浅はかさが悔やまれる。
　五行の紋章戦争後、ゼクセン騎士団は少しずつその在り様を変えつつある。今でも騎士団は国防と国内の治安維持、その両方を担っていたのだが、最近は前者の比重が軽くなってきている。もちろんいざというときに備え、時折大規模な演習も行われることがあるが、ビネ・デル・ゼクセをはじめとする街の巡回警備や、夜盗退治のほうに力を入れている。
　グラスランドとの戦は正式には終わったわけではないが、小競り合いさえ起きていない現状としては、実質終了したものとみていいだろう。そのような時期に、下手に軍備増強を図ってると疑われるような真似は避けたほうがいい、というのが誉れ高き六騎士全員が一致した意見だった。また並行して、評議会に対してグラスランドとの停戦条約を結ぶよう働きかけている最中でもある。好戦派とも呼べる一派のほとんどが、ハルモニアとの内通によって力を失ったこともあり、現在条約の文言を細かく推敲する段階にまで来ている。
　そんなこんなで、最近のクリスはビネ・デル・ゼクセ勤めが増えてきていた。評議会との会議には、やはり正式に団長に就任したクリスが出席するのが妥当、ということもある。そのため、今日も今日とてパーシヴァルを供に、ビネ・デル・ゼクセに戻ってきたのだ。
『クリス様も、たまにはお洒落をしてヒューゴどのを驚かせてみてはいかがですか？』
　その話が出たのは昼食時、ビネ・デル・ゼクセで流通しているものについての話だったか。
　戦の気配が急速に遠のいたせいか、このところビネ・デル・ゼクセを訪れる商人は増え続けている。流れ込んでくるものが、食料や武器・防具のみならず、色とりどりの衣服や装飾品など必需品ではないものまで多岐に渡っているのは、取りも直さず平和の証だろう。そして、真っ先にそれら嗜好品に飛びつくのはたいてい若い女性たちで、思い思いの工夫をこらして恋人と語らう女性たちの姿を、このところよく見かけるようになっていた。
　クリスにとって必要なのは、そうした事象から読み取れる状況だけだ。わが身に置き換えて考えるような出来事ではない。
　だが。
『……そうだな』
　茶化すような、からかうようなパーシヴァルの言葉に笑みとともに曖昧に答え、それで終わったはずの話を、クリスは珍しくその後も気に留めていた。
　クリスとヒューゴは恋人同士とはいえ、そうそう気軽に会うことはできない。互いに忙しい日々を送っていることもあるが、二人の間に横たわる距離も大きく、ただのヒューゴとクリスとして二人きりで会える時間というのは貴重だった。恋人としてゆっくり会えたときはそれだけで幸福で……クリスの中から、お洒落をするとか凝ったシチュエーションを考えてみるとか、そういった事まで気を回す余裕はなく、今まですっぽ抜けていたのだ。
　だから、だろうか。
　パーシヴァルとの会話をなんとなく気に留めていたクリスは、仕事のあとなぜか服屋に寄り、店員に薦められるままワンピースとショールを購入し、帰宅後着替え――現在我に返り途方に暮れている、という状況だった。
「……しまった」
　階下の居間においてある時計がぽおんと小さく鳴るのが聞こえ、クリスは小さく舌打ちした。今日はヒューゴがビュッデヒュッケ城に出向いているため、互いの仕事終わりに合わせてビネ・デル・ゼクセで会おうと約束していたのだが……その刻限までもう幾らもない。今からまた着替えて向かうとなると、ヒューゴを待たせてしまうことは確実だった。諦めてこのまま行くしかないだろう。
　いつものように愛用の剣を持っていこうと、机の上に置いた剣に手を伸ばしたクリスだったが、暫く躊躇ったあとその手を引っ込めた。
「……どうせだからな……」
　小さな苦笑とともに、代わりに護身用の小さな短剣を手に取る。どうせ普段と異なる格好をしているのなら、とことんまで『普通のお嬢さん』のように振舞ってみるのも一興だろう。普段と違う自分に、ヒューゴは驚くか笑うのか、クリスには予想はつかないけれども、その反応を見るのもまた面白そうだった。
「行ってきます」
　そうしてクリスは、ワンピースの裾をひらりと舞わせながら、灯りが照らし出す街並みに飛び出したのだった。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=130</link>
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	<item>
		<title>余計なお世話</title>
		<description>　ぎしり、と床板を踏む音に、ザックは弾かれたように振り向いた。
「……どうしたの、ザック？」
「え、いや……まぁ、な」
　気心の知れた仲間の姿がそこにあったにも関わらず、ザックの表情はますます強張った。動揺のあまり、ザックの返答は胡散臭い事この上ないものになったが、ロディのほうはいつも以上にぼんやりしているらしく、いぶかしむ様子さえ見せなかった。よほど眠いのか、あるいは昨晩の慣れない酒がまだ残っているのか。どちらにせよ助かったことに変わりはない。何とか平静を取り戻し、さらりと話題を変える。
「そういうお前こそ、どうしたんだ？　起きるにゃまだ早い時間だろうが」
「そうなんだけどね……」
　ザックの問いに、ロディはへらりと笑みを浮かべて見せた。元来温和で覇気があるとは言い難い少年ではあるが、今朝は尚のこと緩んでいるようにも見えた。
「何か、腹の中がムズムズしてね。一度起きちゃうと寝れそうになくなっちゃってさ」
　一瞬、勘付かれたか、とひやりとした感触が心の表面を撫でる。だがすぐに、いや、と心中で訂正を加えた。おそらくロディは、昨夜の宴会で体調が落ちていることを言っただけだろう。普段飲み慣れていない人間が、時折場の雰囲気に呑まれ酒を多めに飲んでしまうと、腹具合がおかしくなるなんてのはままることだ。逐一過度に反応すれば、かえって怪しまれかねない。
「ザックはどうしたの？　さっきまで飲んでたとか？」
「まあな」
　これ自体は嘘ではない。だが。
「……もしかして、セシリアも一緒に？」
「んなわきゃないだろーが。あの姫さんだぞ、俺と一緒に夜通し飲むとかってありえんだろ」
「そうだよねぇ」
　実はその『あり得ない事態』が起こっていたのだが、ロディはほわんとした表情であっさりザックの言葉を首肯した。
「どうせこんな時間だし、寝る前にちょっと散歩しようかと思ってな」
　ほっとした反動か、聞かれてもいないのに宿兼酒場の扉前に居る理由を思わずでっちあげてしまって、ザックは内心頭を抱えた。早朝散歩だなんて今まで一度だってやったことが無いことを考えれば、いかにも怪しすぎる。だが、物凄く幸いなことにロディのほうはそこまで考えが及ばないようだった。
「あー、いいんじゃないかな。多分良く寝れるようになるよ、きっと」
　お人よしなロディの素直な受け答えにほっとしつつ、同時にどっと疲れを覚える。さすがに夜通しだらだら飲んで、仲間に心にも無い嘘をつかねばならない状況は、思ったよりも自分自身につらいらしい。普段のロディやセシリアが居たら、容赦なく突付かれボロを出すに違いない迂闊さを露呈しまくっている。
　本当は、ちょうどここでセシリアを見送ったのだ。アーデルハイドの女王となるため旅立つセシリアと、最後の別れの言葉を交わしたのは、つい先ほどのことだ。再びの邂逅を約束し扉を閉め、ため息をついてさあ戻ろうかと思った瞬間にロディの足音がしたときは、本当にどうしようかと思ったが……ザックにとっては運がいいのか悪いのか、どうも単純な偶然の産物のようだった。
「なんか、俺たちがこんな朝顔合わすのって珍しいな。ザックはいつも寝坊するし。普段一番早起きなのはセシリアだけど」
「……そうだな」
　興味の無い風を装い、ザックはことさらそっけなく応えた。
　セシリアがもうこの宿には居ないことを、ロディは知らない。ロディだけが、知らされていない。
　それを薄情と評することは、ザックにはできない。セシリアの葛藤は痛いほど伝わっていたし、仕方の無いことだと理解もできることだった。別れを告げなかったのではない、大事で大切で……だからこそ、告げることさえできなかったのだ。
　セシリアのその気持ちを思えば、急げばまだ追いつける今、ロディに不審を抱かれるような挙動は慎むべきだ。ましてや自分からセシリアの不在を教えるなど、彼女の葛藤も決断もまるっと無視した、余計なお世話だ。
　だが。――それでも。
「流石にセシリアはまだ、寝てるよね」
「……」
　迷ってしまうのは、ザックだけが気付き、セシリアも……ロディ自身でさえも気付いていないからだ。もうここを去ってしまった彼女の話になると、ロディの声が甘く響くことを。愛しそうに……まるで大切な宝物をそっと掬い上げるかのように、優しい声音で彼女の名を紡いでいることを。
　だから。
「気になるなら、姫さんの部屋にでも行ってみたらどうだ？」
「え、い、いや、そんな……」
「姫さんのことがどうでもいいってなら、俺も無理にとは言わんけどな」
「や、どうでもいいってわけでもなく」
　それなりに年頃の少年らしく、咄嗟に寝乱れたセシリアの姿でも想像したのだろう、即座に顔を真っ赤にしたロディがばたばたと手を振った。外見相応の素直な……それだけに不審な反応に小さく苦笑して、ザックは念押しをひとつしてみる。
「なんだったら、早朝デートにでも誘ってみちゃどうだ？　姫さんも喜んでくれるかもしらんぞ」
「で、ででデートって……」
「まぁ、今日は一応予定ないしな。俺はこれから一眠りするから、お前らはお前らでやってくれ。じゃあな」
「あ、うん、わかった」
　素直に頷いたロディに背を向け、ひらりと手を振ってみせる。
　これはきっと『いらぬお節介』に含まれる言動だろう。セシリアの予測では、今日は予定が無いため、昼……運がよければ夕食の時間まで、不在に気づかれないとの思惑だったはずだ。だがザックのけしかけによって、ロディは遠からず行動を起こすだろう。朝食に誘う計画でも立てているかもしれない。そして、外からどれほど呼びかけたとしても返事が無い不自然さに、気づくかもしれない。
　必ずそうなるという保証は無い。ましてや、セシリアが居ないことを知ったあと、ロディがどのように行動するかはもっと分からない。
　ただ、自分は彼らの未来が少しでも幸せなものになるよう、祈るだけだ。賽はもう投げられたのだから。
「おやすみ、ザック」
「あいよ、おやすみ」
　異変に気づいたロディによって、すぐさまたたき起こされることを願いながら、ザックは宿の二階へと姿を消したのだった。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=129</link>
			</item>
	<item>
		<title>生存報告。</title>
		<description>とりあえず生きてます。ちゃんと。
ネトゲやったりネトゲ小話書いたりそっちの二次創作書いたり、オリジナル長編に取り組んだり、いろいろやってます。
&#160;
余談になりますが、拍手取り外しました。
投稿されたコメントが2週間で保存切れるというのが地味に痛かったので。
誤字の報告やご感想あればこちらにぶん投げてください。すみません。&#160;

 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=128</link>
			</item>
	<item>
		<title>束の間の逢瀬</title>
		<description>　りりり、りりり、と虫の音が鳴る。鈴を振るかのようなその音は草原をひそやかに渡ってゆく。まったくの静寂は緊張をもたらすが、ほどよい大きさの雑音は緊張を解きほぐしてくれる。クリスと二人、草原で寝転んで空を見上げながら、ヒューゴはぼんやりとしていた。
　本当ならもっと話をしたいことがたくさんあった。徐々に復興を遂げつつあるカラヤの様子だとか。村の端にある墓地には、ジンバの遺品が眠っているのだとか。そうして、ルースがいつも丁寧に掃き清めているのだとか。
　……そして、ルースがヒューゴに、「クリスにとっても父親なのだから、遠慮せずに来てほしいと伝えてくれないか」と何度も言っていたとか。
「……」
　けれどどの言葉もふさわしくないような気がして、ヒューゴはただただぼんやりと夜空を見上げる。手を伸ばせばすぐに届く距離で、クリスも同じように寝転んでいる。
　群青の帳に、今にも降ってきそうなほどたくさんの星が瞬いている。ヒューゴにとっては見慣れた夜空だが、商業の街として夜でも明かりが灯っているゼクセンで過ごしてきたクリスにとっては、驚きだろう。息を呑んで見入っているのが気配ではっきりと分かる。
　だから。
「……」
　何もせず、ただ同じ星空を眺めるだけ……それだけの、同じ時間と空間とを共有できる喜びを胸に、ヒューゴは幸せなため息をついたのだった。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=126</link>
			</item>
	<item>
		<title>復帰。</title>
		<description>一時期PCがどーしよーもなく壊れるというトラブルに見舞われましたが、ようやく復帰した御月ですこんばんは。

あれやこれや環境の整備も7割がた終わり、ようやく本腰入れていろいろ取り掛かれそうです。
とりあえず、ブログをかけるようになっただけでも十分というか…
パスワードの保存場所がわからず、かなりあせったので。

&#160;

シャドウハーツ取り扱い始めました。
基本的にウル×アリス前提。今ちょうどやっているので、それにあわせて進んだり進まなかったり。
グッドエンディング目指していく予定です。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=125</link>
			</item>
	<item>
		<title>忘却。</title>
		<description>サーバ代とドメイン代を払い忘れ、あやうく消滅させかけた御月ですこんにちは。

消滅させかけたというか、消滅させたというか……半月ほど更地になってしまいましたが。

&#160;

一応まだ生きているのでご報告。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=124</link>
			</item>
	<item>
		<title>閑話休題。</title>
		<description>長らく更新をせずすみません。
少し私生活のほうでばたばたしておりまして……。

というかですね。重なるときはどうしてこう、重なりまくるのか…。

結婚式、会社の解散、再立上げ、子猫を拾った（それも生後数十分のを）のでその子育て、引越し……と4月からちょっと洒落にならない状態でした。
今はようやく落ち着いてきた……かな？

拍手を多く頂いているのに、それに値するものをお返しできず本当に申し訳なく思ってます。
まだ引越しの荷解きは終わってませんが、ゆるゆる片付けつつ更新をしていく予定です。すみません。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=123</link>
			</item>
	<item>
		<title>許されるならば</title>
		<description>　かつかつと階段を下りる足音に気付いたらしく、カウンターに座っていたザックがくるりと振り向いた。その手には相変わらず麦酒を満たした大きなジョッキが握られていて、セシリアは素直に凄い、と内心感嘆した。酒全般が苦手というほどではないが、セシリアが飲めるのは薄い果実酒ぐらいだ。ザックが好んで飲む麦酒や蒸留酒などは苦いやらきついやらで、正直なところ何がそんなに美味しいのか、理解ができない。何杯も飲むからにはきっと、ザックにとっては美味しいのだろうけれど。
　それとも、もっと大人になればわかるのだろうか。ザックぐらいの年齢になれば。
「……どうした姫さん」
「ふふふ、内緒です」
　ザックがいぶかしげに声をかけてきたが、セシリアは曖昧な含み笑いで返答を避けた。「ザックのように腰に手を当てて、麦酒を一息に飲み干す自分を想像してしまいました」と正直に言おうものなら、大笑いされるかもしれない。それだけならまだしも、今ここで実現してみるかなどと言われるといささか困ったことになる。ザックの挑発に乗って苦い麦酒を飲むはめになるのも、断ってなんとなく気まずい雰囲気になってしまうのも嫌だった。
　……最後の、夜なのだ。
　それにしても、とザックが麦酒を煽りながら、悪びれない笑顔を向けた。
「すまんな姫さん。面倒なこと頼んじまって」
「別に面倒事ではありませんけど。……これからは、あんまりロディにお酒飲まさないで下さいね」
「わーかってるって。大丈夫俺様に任せとけ」
　できるだけ厳しめの口調で釘をさしたものの、返されたザックの言葉は限りなく軽い。だから心配なんだ、という言葉を飲み込み、かわりにしみじみため息をついた。ちらりとハンペンのほうを見ると、どうやら同じ感想を抱いたらしい青いカゼネズミがえっへん、と小さな胸をそらした。
「ザックの『大丈夫』はイマイチ信用できないからね。オイラがきちんと無茶しないように見張っておくから、安心してよ」
「よろしくお願いしますね」
　一人と一匹で話が成立した途端、ザックがぶつくさと文句を零すが、ハンペンとセシリアはそれを完全に黙殺した。亜精霊より信用が無い人間というのもおかしな話だが、こういう場合は日頃の行いがものを言うものだから仕方が無い。
「オヤジ、今度は蒸留酒くれ」
「あ、じゃあわたしはホットミルクお願いします」
「あいよ」
　ふてくされたザックが追加注文するのに便乗してセシリアも声をかけると、カウンターの向こうから落ち着いた渋い声が返ってきた。品物を待つ間ふと訪れた沈黙に、セシリアは小さくため息をついた。滲みそうになる涙を振り払うように、できるだけ不自然にならない明るい声を上げる。
「また。いつでもいいから、アーデルハイドに来て下さいね。ザックとロディならもう顔見知りですから、城の兵士達もすぐに通してくれるでしょうし」
「それはいいけどさ……」
　セシリアの空回りを抑えるように、ザックが静かな眼差しを向けてきた。声音にも表情にもセシリアを責める色は微塵も無い。むしろ純粋に心配してくれているのが分かるだけに、つきりと胸が痛んだ。その話題に触れたくなくて、できるだけ違う……それも明るい話題を持ち出したのだが、どうやらこの青年にはお見通しだったらしい。
「なぁ姫さん。ロディには言ったのか？」
「……いえ」
　明日早朝、セシリアはひとりでここを発つ予定だった。――アーデルハイドの女王となるために。
　今夜の宴会は、その送別会代わりだったのだ。ハンペンもザックも、それを知っていた。今日という日の意味を知らなかったのは、ロディだけだ。
「部屋には、急用ができてアーデルハイドに戻らなければならないことを手紙に書いて、残しましたから。しばらくはそれでごまかせると思います」
「姫さんは、それでいいのか？」
「はい」
　最初の旅と異なり、今の旅は特にこれという明確な目的があってのものではない。もっとも、ロディもザックは三人と一匹で世界を回るその前から渡り鳥だったわけで、ある種元に戻ったようなもので、もともと目的などあるような無いような状態だった。セシリアにとっては、表向きは見聞を広めるためではあるが、強いていうなら再びザックとロディとハンペンとで旅をすること自体が目的といえるかもしれない。
　できることならば、ずっとこんな日々が続けばいいと願っていた。けれど同時に、何時かこのときが来ることを覚悟していた。
　セシリアには、アーデルハイドの公女として課せられた責務がある。それを重たく感じたこともあったが、今はそうは思わなくなっていた。セシリアがアーデルハイドを、ファルガイアを愛する気持ちは自体は間違いなく最初からあるもので、「公女だから」「守護獣の巫女だから」という理由からよるものではないと、セシリア自身気付いたからだ。公女でなくても、守護獣の巫女でなくても、きっとできることをできる範囲でやっていたはずで……それは、公女であっても同じなのだと、今のセシリアなら自信を持っていえる。
　それでも。
「待たせたな、ホットミルクと蒸留酒だ」
「……ありがとうございます」
　酒場の主人から受け取ったミルクと一口飲むと、柔らかい甘みと温かさとが口の中に広がった。主人の厚意で蜂蜜が入っているようで、かすかな香りが鼻をくすぐる。優しさと甘さと温かさが混然となってセシリアを揺さぶった。
「……姫さん？」
「大丈夫……大丈夫です。ただ、少しだけ……今は、見ないふりをして下さい」
　カップを両手で抱え込み、セシリアは深く俯いた。その滑らかな白磁の頬を、真珠の雫が伝わり落ちる。セシリアの望みどおり言葉はかけず、ただ見守ってくれるザックの優しさに甘えて、セシリアは静かに涙をこぼした。
　己の決断に後悔は無い。誰に強制されたのではない、自分自身が選び決めた道だ。ヨハン含め国民からの望みであったにしろ、アーデルハイドとファルガイアのためにできることをできるだけやりたい自分の気持ちの為に、選んだのはセシリア自身だ。
　……許されるならば、ずっと夢を見ていたかった。気の置けない仲間と……誰よりも大事な人と、世界を回って助け合って、時には軽口を叩きあって。ジェーンと女の子だけの秘密のお話をしたり、マリエルとゆっくりハーブのお茶を楽しんだり……本当に、夢のように楽しい日々だった。
　けれど、夢はいつか、覚める。終わらない夢など、ありやしないのだ。
　だから。
「ザック……今夜は最後まで、しっかり付き合って下さいね」
「いや、俺はいいけど……姫さんは朝早いんじゃなかったか？」
「早いけどいいんです。仲間と過ごす最後の夜なんですから誰にも文句は言わせません」
「……セシリア、なんか酔っ払いみたいなこと言ってるよ」
「えー、姫さんホットミルクで酔ったのかよ？　ずいぶんとまぁ器用なことで」
「私は酔ってません！　それより大体ザックのほうがよっぽど……」

　見たかった夢の最後の一滴まできちんと覚えて記憶の宝箱にしまいこんでおきたいと想った。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=122</link>
			</item>
	<item>
		<title>優しい嘘</title>
		<description>　ふわふわとした世界が、気だるく肢体を包む。飲みなれない酒は思ったよりも効いているようで、ぼんやりしたままロディはセシリアを見上げた。ベッドに寝転んでいる自分を覗き込むセシリアは、後ろから明かりを受けて柔らかい光を放っている。綺麗だな、と素直に思った。
「大丈夫ですか、ロディ？」
「うん」
　微熱のような温い世界で、セシリアの声と姿だけがくっきりと届けられる。自分の声さえぐんにゃりしているのに、セシリアの声はどこか清水のようにさらり伝わってくるのが不思議だった。
「本当の本当に、大丈夫ですか？　あ、お水飲みます？」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「……ならいいんですけど……」
　よほど気にかかるのか、セシリアが小さくため息をついた。セシリアが心配してくれるのが嬉しくて、ロディはふにゃりと笑う。
　ザックに強かに飲まされたロディと違い、ほとんど飲んでいないセシリアの顔色は、ごくごく普通だ。それでも頬が淡い桜に染まっているのは、先ほどまで続いていた宴の余韻だろう。酒ではなく、高揚した空気に酔っているに違いない。
「今日は、楽しかったねぇ」
「そうですね」
　今夜の食事は、まさに宴会、といった感じだった。魔族を倒した影響か、それとも別の要因があったのか、守護獣の力が強まりつつあるらしく、ファルガイアには次第に雨と緑が増えつつある。とはいえ、野菜や果物といった農作物は、まだまだ高価なものが多い。今夜の食事には、そうした高価な野菜をふんだんに使った料理や、珍しい魚の料理などがたくさん並んだのだ。珍しいだけでなく美味である料理の数々に、ロディやザック、それにもちろんセシリアも、存分に舌鼓を打ったのだった。
「それに、セシリアの唄、すごく綺麗だったし」
「ふふ、ありがとうございます。……なんだか、改まって褒められると照れちゃいますね」
「そう？　でも、本当に綺麗だったし。ザックはまぁ……アレだけど」
　余興とでも言うのか。セシリアが披露してくれたのはアーデルハイドに古くから伝わるらしい歌だったが、高く澄んだ声で紡がれる旋律は、天上よりの調べと言えるほどだった。酒場に居たほかの客達も大絶賛で、拍手の嵐だった上に、「もう一曲」の掛け声まで飛んでいたから、決してロディの贔屓目だけではないだろう。
　ちなみにその後調子に乗ったザックが歌ったときは、魔物の精神攻撃を思わせる歌声に、酒場中がブーイングに包まれた。ザックは「俺様の美声が輪からんとは芸術を解さん奴め」などと言っていたが……ハンペンに「その言い草はゼットそっくりだね」などと止めを刺されていた。
　ただひとつ、気になることがあるとすれば。
「セシリア……あのさ、今日は何かの記念だったの？」
「ふふ、内緒です」
　本日何度目かの質問をそれまでと同じようにかわされ、ロディは小さく唇を尖らせた。今日の食事会を手配したセシリアは、どうやら最後までその理由を教えてくれないつもりらしい。
　セシリアもザックも、ロディも今日が誕生日というわけではない。ついでに言うと、三人が初めて出会った日でもない。ましてや魔族を倒した日でも無いし……そもそも、その日なら毎年ジェーンやエマ、ゼットという、今は離れている仲間達と毎年の再会を約束した日でもあるから、こうして三人（＋１）だけで騒ぐということは無いはずだ。
　ロディがセシリアやザックと共に旅をするようになってから、軽く一年は経っている。その間に、それぞれの誕生日をはじめ大抵の「記念日」は経験してきた。その記憶に照らして考えてみても、今日は何か特別な日だという記憶は無い。とはいえ、渡り鳥としての生活が長く、ややもすると日付の感覚さえぼんやりしがちなロディとザックに比べ、セシリアは彼女らしい繊細さで、折々の節目を大事にしてきた。だから今回も、ロディには気付かない、彼女にとって大事な何かの日なのかもしれない。
　……ここまで頑なに教えてくれないのは不思議だけれども。
「ロディ、そろそろ眠いのではないですか？」
「う、ん……」
　柔らかいセシリアの問いかけに、否定したかったがしきれず、ロディは曖昧に頷いた。
　実のところ、物凄く眠い。じわじわと体を締め付ける睡魔はなかなかに強力で、体の奥底が痺れているような気持ちさえする。本当に楽しかったからまだまだ居たかったのに、１階の酒場から２階に取った部屋へ移らざるをえなかったのも、この眠気のせいだ。ロディよりもっとずっとたくさん酒を飲んでいるザックは全く平気なようで、今も一人酒場で飲んでいることを思うと、いささか情け無いような気もする。それとも、何度か飲むうちに慣れてくるのだろうか。
「無理はしなくてもいいんですから。ゆっくり休んでくださいね」
「ん……」
　明かりはつけっぱなしだし、カギも開け放しだが……まぁ、いい。きっとセシリアがカギをかけて、同室のザックに届けてくれる。今はもうとにかく、眠くて眠くて仕方が無かった。
　だから。
「また明日ね、セシリア……」
「……はい。……おやすみなさい、ロディ」
　僅かに震えた声音にも、深い感情を映した微笑にも、零れ落ちた一滴の涙にも気付かずに。
　ロディは引き込まれるように眠りに落ちたのだった。 </description>
		<link>http://www.clock-works.net/blog/?p=121</link>
			</item>
	<item>
		<title>解説。</title>
		<description>ちょっと時間ができたので、色々まとめてアップしてみた御月ですこんにちは。

ということで、色々まとめて解説。というか主に「覚悟を問う刃」についてなんですけども。

騎士長エンドの場合、リオンは女王騎士になりますが、長続きするのか、というのが御月の正直なところなんですね。
王子とミアキスはリムスレーアを介さなくても接点はあると思うのですが、リムスレーアとリオンは王子を介してしか接点がないように見えます。作中王子に語らせてしまいましたが、王子はあくまで「女王騎士長代理」であって、いずれはリムは婿を迎え、王子は女王騎士長代理から退くことになります。その後リオンは女王騎士として働き続けるモチベーションがたもてるのか。政略結婚当たり前ということになると王子が他国へ婿入りする可能性もあるわけですしね。
御月がリオンの女王騎士にひっかかり続けるのは、ゲーム中のリオンが王子に肩入れしすぎているように見えるのが大きいと思います。護衛なんだしヒロイン扱いなんだし、それはそれでいいんですけど、リオンの立場というか肩書きは『女王騎士見習い』なんですよね。代々の女王に仕える（と解釈していいハズ…）のがお仕事なわけで、王子の護衛は基本「女王の家族の身辺警護」となるわけで…にもかかわらず、リオンはアルシュタートと王子が対立なんぞしようものなら、問答無用で王子側につきそうな子なわけで。『女王騎士見習い』じゃなくて、ただの幼馴染だったら、こんなに引っかからずにすんだのになー。
リムに対するミアキスの執着もかなりアレですけど、あれはまぁ……王位を巡って現王の派閥と次期王の派閥が血みどろの争いするのなんて珍しくないですし。

あと、「ザハークとアレニアも家族みたいなもの」というのは当サイト設定です。すみません。過去話で二人が空気扱いだと…なんか違うだろ、という気がしてしょうがないんで。でも実際、カイルとガレオンは仲間でアレニアとザハークは空気、なんて冷遇されてたら、そりゃ反乱も起こしたくなるよなーと。というかアルシュタートとフェリドはそんな差別しない人たちだよ！と主張。

まぁ結論としては、リオンはロイと幸せになればいい、と思います。

&#160;

以下５０音小話ミニ解説。

は：花盗人の罪
時期としては『葬送の鐘』直前。ヒューゴとルイスは親友だといいなぁ。

ひ：雲雀の賁臨
ひばりのひりん。賁臨てのはえらい人がどこか訪れること…だったような。ということでリムたんお忍び話と見せかけて夢オチ。
リム分が不足している王子とミアキスに、女装させられたロイがちくちく「勝気そうなところが似てる」「姫様はこんなに目つき悪くないです～」「もっと上品に」等等突付かれる話はいずれ書きたいです。

ふ：不等号な感情
ロディ×セシリアを前提としたとき、セシリアに対するロディってコンプレックスが大きそうです。人間と人工生命体。守護獣の姫巫女と魔族の亜種。男の人のほうが肉体的な欲求が強いだけに、ダブルで「自分は汚れている」と思いつめそうな。
ザックは意外と（というと失礼にあたるかもしれませんが）パーティ内でのいい兄貴分というか相談役になってそうです。聞き上手はザックとロディとセシリア、話を聞かない代表はエマとゼットっぽい。ジェーンはツンデレだから…両方？

へ：碧落からの祈り
遠く海を隔てても伝わる想い。常に見送る立場というのは、若くして不老不死となったクリスとヒューゴにはつらいんじゃないですかね。心の柔らかいところが磨耗していきそうで、だからこそ二人で支えあっていってほしいなぁ、と思います。

ほ：保護者の懊悩
「不等号な感情」続き。潔癖ゆえに悩む少年と、見守る青年。…青年？
ザックほどの年齢だといろいろ経験してそうです。妖精さんのわきゃないよな多分。エルミナ一筋としても、色町に行った事がないってのもなさそうですし、元々やんちゃしてたっぽいし。
どーでもいい話ですけど、ザックが飲む酒ってビールとウィスキーしか想像できません。ワインとかリキュールとかカクテルとか……似合わねー！ </description>
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